20代~30代の商社マンの転職者が増えています。私の身の回りの商社マンも少なくない数の方が商社から転職していきました。
人事部や経営幹部層も若手の離職率の上昇を、課題として認識しているという話が漏れ聞こえてきます。
やめていく理由はそれぞれでしょうが、私自身が商社から転職しようと考えた最大の理由は「成果と報酬」が結びつかないということです。
商社は「より多く稼ぐ」ことが至上命題の企業文化です、しかしそこで働く個人がより多く稼ぐことができない制度になっています。
また、私自身が「周囲と同じ」ということに耐えられない性質であったことも転職活動を始めた大きな理由です。
極めて個人的な話となりますが、転職を考えている商社マンの方の参考になる部分もあると思い、お話させて頂きます。
商社の稼ぐ文化への違和感
商社の最大の文化と言えば、「稼ぐ」ことへのこだわりではないでしょうか。
商社にはもともと、自分の力を発揮して大きく稼ぎたい人が集まっています。
そして、社内ではなにかにつけて、「結局儲かるのか?」ということが問われます。
これは企業として健全なことであり、私自身も大いに賛同する部分です。
ただし、商社マンには会社に稼がせることを考えるあまり、個人として稼ぐことを忘れてしまっている方が多いのではないかと感じます。
「会社への貢献≠報酬」に気がついた
私は自分へのリターンが明確な分野では、他のものを捨てて努力できる自信があります。
但し、給与がほぼ横並びの制度の中で、プライベートを犠牲にしてまで会社の仕事に取り組もうという意思は、残念ながら私には欠如していました。
私自身も、入社したてのころはがむしゃらに、どうやったら稼げるのかということを考え続け、稼げるための能力をつけようと考えていました。
稼ぐためには、ある程度のパワハラや、客先からの理不尽な要求にこたえてでも成果(利益)を上げることが一番だと考え行動していました。
会社に利益をもたらした先には、自分の報酬アップといったものがあるのだと漠然と期待を持っていました。
ところが入社して、初めての海外駐在を終えて日本に戻ってきて、中堅と呼ばれる立場になってくると、見える景色が違ってきました。
プライベートをほとんど犠牲にして働いている方が比較的多いのが商社です。
私自身もそのような働き方をしてきました。
確かに彼らの会社利益への貢献は大きい、ただし彼らはその貢献に見合う報酬を得ていないと思ってしまいました。
文字通り、死ぬほど(過労死するほど)働いて業界内での人脈を築き、専門知識を身に着けた営業のエースと目される人が、人事異動で全く別の業務を割り当てられ、再度キャッチアップするために死ぬほど働いている姿を見て、私にはそのモチベーションは全くないことに気が付きました。
仕事の報酬は仕事という考えへの違和感
もちろん、死ぬほど働いて商社マンとしての能力を高めて、会社に貢献する方を尊敬しています。
しかし、私は問いたいです。会社のために稼いで稼いで、自分の稼ぎはなくていいの?と。
死ぬほど働いて成果を上げる営業部のエースの給与は、入社同期とほぼ横並びです。
時給換算ではそこそこに働く同期に圧倒的に負けています。
個々人が仕事になにを求めるかはそれぞれですが、私自身は、貢献>報酬では働けません。
よく言われる、「仕事の報酬は仕事」という日本企業の伝統的な考え方に賛同することができません。
もちろん、役員クラスまで出世すれば、ある程度は報われるのでしょうが、20‐30年先の報酬のために働くことも私にはできませんでした。
周囲と同じでいたくない
私が元々、商社を就職先として希望したのは、人とは違う面白い人生を送りたいと考えたからでした。しかし、実際には社内での「みんな一緒感」は思ったより強かったです。
それ自体悪い事ではないと思いますし、私自身が変人なだけだと思いますが、以下のような横並び感が性に合いませんでした。
給与が横並び
前述の通り、業務上の評価が違ってもほとんど給与は同じです。それゆえに、生活レベルはほとんど同じです。似たようなところに住んで、似たようなものを持っています。
都心の少しゆとりのある、アッパーマス層モデルを体現したような生活です。都心のおしゃれな街にそこそこのマンションを買って、子供は私立に通わせて、高級国産車に乗るイメージです。
収入に合わせて、消費レベルも上げているので、生活にゆとりを感じることは少ないのではないでしょうか。
私自身は、変人なので、大学生時代から生活水準を上げないということをコンセプトに生活していました。
仕事で経験できることが横並び
私の配属された部署がthe商社の重厚長大分野であったことが大きく影響していますが、10年以上前から同じようなビジネスモデルで稼いでいる仕事が多く存在していました。
年次によって業務の内容が大体決まっていました。
海外駐在に出ても、〇〇さんから数えて5代目の駐在員というように、固定ポストの上を人が流れていくのが実情でした。
少し年上の先輩から、「あの駐在地の所長がおいしいポストだから、将来狙いたいよね!」と言われても、全く心がときめかなかったことを覚えています。
私自身がアマノジャクなだけですが、先人が経験したルートを辿って、出世したいとは思いませんでした。
社内での決まったルートに乗るより、これまで誰も行ったことのない国や業務を経験したいと思っていました。
先人から、ごちゃごちゃ意見を受けるのがとにかく嫌いでした(笑)
コミュニケーション方法が横並び
海外で異文化と接する機会の多い商社マンですが、思った以上に社内で良しとされるコミュニケーションスタイルが画一的でした。
基本的には業務外でどれだけ同じ時間を過ごしたかで、コミュニケーションが密にできているかの判断を行う方が多く存在しました。
残業後に飲みに行くかどうか、会社の公式飲みが終わった後に二次会に行くかどうか、毎日同じメンバーで昼食に行くかどうかあたりが重要項目です。
このような場でしか本音を語れない方が多く存在していて、商社マンは実はとてもシャイな方が多いのではないかと思いました。
私は、同僚や上司と話すべきことは仕事中に話して、プライベートな時間はなるべく家族や友人と過ごしたいと考えています。
1日で起きている時間の半分以上を職場で過ごしているのに、それに加えてプライベートの時間を割かないと良好なコミュニケーションができないというのはとても不思議に感じました。
商社マンからの転職活動を通じて自分の人生を自分で選択することができた
「貢献≠報酬」と「横並びの文化」が、私が商社から転職を考えた理由です。
私自身が違和感を感じたというだけであり、文化に合っている方にとっては温かい組織の中で、同僚や上司と公私ともに密に交流を持つことができ、安定して働くことのできる職場であると言えます。
私は、在籍中ずっと営業部に所属しており社内査定も悪くはないものでしたが、常に変な人認定はされていました(笑)
私は大先輩の商社マンの方々のように、自分の利益を度外視して会社の利益と共同体の和に貢献できるような素質がありませんでした。
自分の為に稼ぎたい+横並びでいたくないという思いが募って転職活動を始めました。
収入も良く、そこまでハードワークでもない商社から転職活動する人は少数派です。
転職活動を通じて、会社を自分自身で選べるということが実感できると共に、会社の仕事だけではなく副業も含めて、自分の人生計画を立てていくべきだと気が付けたことが最大の収穫でした。
私の考え方は自己中心的なのでしょう、しかし自分の人生なのだから会社のためではなく自分の為に働きたいと考えることは当然だと考えています。
転職活動を始めると、現職に持っていた違和感の理由が明確になり、今後の進みたい道が見えてきます。
働き始めてから感じていたモヤのようなものが晴れてくる感覚です。
転職活動をやってみて本当によかったと考えており、現職にもやもやを抱えた親しい友人にもお勧めしています。
最初から最後まで自己中心的な意見ばかりでしたが、同じようにモヤモヤを抱えている商社マンの方は是非、転職活動をしてみてください。
転職活動自体、プラスになることはあっても損になることは何一つありません。
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