商社のエース級の社員はどこに転職していくのでしょうか。今回は私がみてきた実例を紹介します。
この記事内のエース級社員というのは、基本的には役職につく前の30代中盤までの社員で、とりわけ優秀だと周囲から認められている社員を指します。
さて、そんな商社のエース級社員も20代の若手エース級社員と30代のエース級社員で転職先の特徴に差異があります。
入社早々に20代でエース級と目されている方は、入社した時点で各種能力値が高く、自身の能力の高さを根拠に、業種を変える転職を行って、早い段階で商社を去っていきます。
一方で、30代を超えてエース級と目される方々は、商社での自身の担当業務に適正を発揮して、業界内での経験と実績を積み重ねています。したがって、転職先は同業界の外資系企業が多くなる傾向にあります。
最優秀層のエース級は若手時代に転職しがち
私の同期の最優秀層は下記2パターン存在していました。(①と②二つの要素を併せ持っていた方もいました。)
①学生時代に外資コンサルや投資銀行に内定していた頭脳明晰系
②学生時代から自分でビジネスを立ち上げた経験などのある事業家系
私が見てきた経験では、この2パターンに属する最優秀層の多くは20代のうちに、外資コンサル・投資銀行に転職するか、M&A留学、米国やシンガポールに転職などの選択肢を選んで、商社から去っていきました。
私の同じ部署の同期にも①タイプの最優秀層同期がいたのですが、入社1-2年目ですでに入社5年目以上の先輩よりも重要な仕事を任されていました。
仕事も多く任されていたため、深夜までの残業や休日出勤を多くこなしており、能力と仕事量共に他を圧倒しており、エース級として目されていました。
そんな彼は、若手の海外駐在から帰った20代後半で商社をやめて海外のトップMBAに留学していきました。MBA後には外資投資銀行で働いており、収入は商社時代の2倍はあるそうです。
彼曰く、商社で数年働いた結果、年次を問わず自分自身が商社内ではトップクラスに優秀だという事がわかり、より優秀な人がいる環境で瀬在琢磨したくなったとのことです。
入社当時から、ちょっとレベルが違うなというエース級社員は、若手時代にさっさと転職してしまうことが多いです。
もちろん、超優秀層でも辞めずに商社に残り続ける方もいます。
私が入社したころのある役員は若手・中堅時代に抜群に仕事(トレード)ができて、外資からはるかに良い待遇を提示されているのになぜか転職しないことで、社内で有名だったそうです。
最優秀層に続く層がエース級として台頭してくる
余談ですが、上記のように最優秀層は若手時代に早々に商社から去っていきがちです。そして、彼らが抜けた後、最優秀層に続く層が社内でエースとして育ってきます
商社に10年以上在籍すると、超優秀層が転職してしまい、残った自分の地位の相対的上昇に気が付く時がくると思います。
入社5~10年目くらいの間に、入社当時はごく平均的だった方が配属先の業務に適正を発揮して、エースに育つことも多くあります。
取り扱い商品に対する情熱を持って、人より器用でなくても、長時間仕事に打ち込んで10年くらいたつと、部署のエースに成長できることがあります。
決してスマートな仕事だけではなく、雑用も盛りだくさんの商社という職場では、ひたすら年月をかけて仕事に打ち込み続ける姿勢も重要な評価軸の1つです。
入社10年目以降の商社のエース社員はどこに転職していくのか
入社10年目~の30代社員でエース級と呼ばれる商社マンは、取り扱い商品に対する豊富な知識があり、その業界のプロフェッショナルです。
例えば、穀物トレードの分野で、業界の動向から個々の商品特性に精通しており、実際の取引でも利益を上げて実績をつみかさねているというような方で、社内や同業他社から一目おかれています。
商社の中堅社員ででエースとして活躍している方が転職する先は、同業界の外資競合他社が多いです。
商社のエースとして10年以上活躍してきた方であれば、所属業界に対する適正もあるでしょうし、いまさら全く別の業界でキャリアをゼロから再度構築するインセンティブは大きくありません。
彼らが転職を決める大きな理由は、業界と仕事はそのままで外資から商社の倍以上の待遇を提示されるからでしょう。
商社に「総合職」として長く在籍すると部署異動は避けられません。
特定の業界でのプロフェッショナルとしてのキャリアを望む場合、同業外資に移ることが賢明な選択肢でしょう。
商社にいると石油トレーダーとしてキャリアを重ねてきたのに、いきなり経営企画などの管理部隊に配属されたり、急に石油資源の開発部門に移されたりと、どうしても専門職としてのキャリアが積み重ねにくくなっています。
専門性を身に着けさせすぎずに、年収1,000-2,000万円層に人材を集中させて、どの社員でも仕事が回せる仕組みを作っているのが商社だと言えます。
組織としては非常にうまくできている商社ですが、個人としてのリターンを追求したい能力ある社員にとっては物足りない部分があるのは事実です。
まとめ
商社エース級の社員の方々の転職実例をこれまで見てきましたが、大部分の方は転職したことに満足しているようです。
若手の間に別業界に転職した方は、自分の能力をより伸ばせる環境に身を置けたことに対する満足感を話してくれます。
また、商社で10年程度勤めて、特定業界のプロフェッショナルとして外資他社に移った方からは、待遇の上昇と今後もプロフェッショナルとしてのキャリアが積めることに対する充実感を話してくれます。
社内のだれからもエースと目される若手・中堅商社マンが転職した後に、失敗したという話はあまり聞いたことがありません。
競争が激しく、もともと優秀な方が多く入社してくる商社において同僚を圧倒するパフォーマンスを発揮してエースと目される方の能力は高く、どの会社でも活躍できる可能性が高いです。
我こそはエース級との自身がある商社マンの方は自信を持って転職してみてください。
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